精神科医療と心理学に関するあれやこれや

初老の精神科医が、精神科医療の現実や心理学的知見などについて徒然なるままに書き散らします

気分障害からの回復の手引き その1 日常の過ごし方について

今回から何回かに分けて、いくつかの精神疾患についての回復の参考となる事柄を書いて行こうと思います。

 

まずはタイトルにもあるように、気分障害について

 

ちなみに私は、現在巷で言われている気分障害という診断名を持つ当事者には、様々な病態の方がいらっしゃると考えています。それは非常に古典的な「内因性うつ病」と呼ばれる方から、DSMでは消失してしまった「抑うつ神経症」と呼ばれる病態の方、更にDSMとは無関係ですが、マスメディアなどで「新型うつ病」と呼ばれる病態の方、更には「双極性感情障害」と呼ばれる病態の方など…おそらく共通項は「気分の落ち込みが持続する」だけであって、その原因も、誘因も、経過も、予後も、まったく異なる病態ではないかと考えています。

 

そこでとりあえず総論的に「気分障害全般に言えること」から書き始め、必要に応じて個別の病態に対する注意点を述べてゆくことにしたいと思っています。

 

日常―特に昼間の過ごし方について】

 

1:急性期はゆっくりと休む

 

はじめて気分の調子を崩したとき、及びそれまでは良い経過だったのに再発してしまったときには、原則としてしばらくの間は「極力ゆっくり休む」ことを最優先するようにしましょう。どれだけの期間ゆっくりするべきかは、その当事者個人の状態や事情によって千差万別ですので、必ず主治医の意見を聞きながら周囲の人とも相談することが必要です。

 

2:心身の疲れが取れて元気が戻ってきたと感じるようになったら、リハビリをする

 

しばらく充分な休息を取ることにより、気分の状態が回復して安定してきたと感じられたら、心身のリハビリテーションを行いましょう。具体的には、①日常生活のリズムを取り戻すこと ②体力を回復させるために軽い運動をすること ③短時間の読書や作業などを行うことで、集中力を取り戻すこと の3つが大きな柱になります。

 医療機関によっては、デイケアや復職支援サービス、リワークプログラムなどを行っているところもありますので、上手に利用しましょう。

 

3:病状が長期化してしまったら…

 

もしも何らかの理由で体調の不良が長期化してしまった場合には、それに応じた対応が必要となります。具体的には、自分自身に対する要求水準や目標を主治医と相談しながら再検討して、「無理のない範囲でできることをする。自分のするべきことについては『適切な(←ここは重要!過剰な責任感を抱えることは百害あって一利なしです!)責任感を持つ」ことを原則とします。

 ただし、このような再検討がどのくらい必要なのかは、個人によって非常に大きく異なりますので、主治医や周囲の協力者との時間をかけた充分な話し合いのうえで慎重に決めてゆかなくてはなりません。ややもすると焦って結論を出したがったり、不必要に自分に厳しい結論を出そうとする傾向が出てしまうことがあります。そこには充分すぎるぐらい充分に注意してください。